WEB版すいせん [2018年10月号]
災害対策研修会報告
福井医療短期大学 リハビリテーション学科 作業療法学専攻
酒井涼
平成30年度福井県理学療法士会・作業療法士会・言語聴覚士会合同災害対策研修会報告 災害医療現場最前線
-リハビリ職種に何ができるか-
近年、東北沖地震や熊本地震、北海道地震など、国内での大規模災害が頻発しており、社会的にも災害対策に関心が高まっています。福井県作業療法士会では、常設委員会として災害対策委員会を設置しています。大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(通称J-RAT)の立ち上げや県内で災害が発生した際のリハ専門職の支援方法の確立を目的に、福井県理学療法士会、福井県言語聴覚士会と協力し、定期的な会議を行っています。今回、県内のリハ専門職を対象に、災害対策に関する研修会を企画開催しました。参加者は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のほか、県庁職員や介護福祉士、社会福祉協議会など80名以上の多職種の方々にご参加頂きました。
講演では、福井大学医学部医学科地域医療推進講座講師の山村修先生に「災害医療ネットワークの発展~災害医療対策本部の歴史~」をテーマに、これまで山村先生がご経験された災害現場の実情や、災害発生時の医療提供体制について概要をお話して頂きました。災害発生時には、保健所管轄区域や市町村単位で、保健所や市町村などの行政担当者と医療関係者、医療チームなどが定期的に情報交換を行う場として避難所が設けられます。避難所などの医療ニーズを適切に把握、分析して医療チームを配置調整するなどのコーディネート機能が十分に発揮できる体制が求められます。リハ専門職においても、災害が発生した際にどのような組織が立ち上げられ、どのような動きをするのかを事前に把握している必要があります。また、災害発生時には、D-MATや国境なき医師団、HuMA、AMDAなど、多種の団体が現地で活動を展開するため、これらの支援団体を統括できるような体制作りが求められています。
シンポジウムでは、「被災地支援におけるリハビリ職種の役割を考える」をテーマに、5名のシンポジストをお招きしました。福井市社会福祉協議会の小柏博英氏には、災害対策に関する社会福祉協議会の活動内容についてお話して頂きました。社会福祉協議会では災害派遣福祉チーム(通称DWAT)の組織作りを行っています。平時から地域の防災にリハビリ関連職の視点を取り入れていくような啓発活動、組織作りの必要性についてお話し下さいました。次に、リハビリ支援に関る関連団体について、福井県言語聴覚士会の小島育子氏にお話して頂きました。リハビリ支援に関る団体として、J-RATがあり、その組織や活動内容について説明して頂きました。J-RATは日本理学療法士協会や日本作業療法士協会、日本言語聴覚士会などのリハビリ関連職種が共同して取り組む災害支援団体であり、近年では、熊本地震などでも活動を行っています。実際に熊本地震発生後、J-RATとして現地に派遣された福井県作業療法士会災害対策委員の櫻井美穂氏にそのご経験についてお話して頂きました。最後に、「災害支援における多職種連携」をテーマに福井県理学療法士会災害対策委員の北出一平氏、西田拓司氏から、JIMEF研修での経験についてお話して頂きました。どの方も、未だ明確な枠組みのない災害支援の体制の中で、リハビリ専門職の役割とは何なのかをよくお考えになられていました。
今回の研修のように、災害対策活動は平時からの啓発活動、災害時のための組織作りが重要であると考えています。今後も福井県理学療法士会、福井県作業療法士会、福井県言語聴覚士会の三士会で共同して啓発活動に取り組み、災害対策に関するマニュアルの作成や行政、関連団体との連携を深めていけるよう活動に取り組んで参ります。会員の皆様方にもぜひ関心を持っていただき、福井県が災害に強い県になれるようご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。