WEB版すいせん [2023年3月号①]

福井県内の専門・認定作業療法士の紹介⑫ 豊かな職業生活を目指して

医療法人 嶺南こころの病院
理事長補佐兼総務部長
岡本利子

 

精神科領域で働くことを選択したいきさつ

 私は神戸市で生まれ育ち地元の大学で作業療法(OT)を学びました。精神科OT教授の集団精神療法に基づく授業(気持ちを言語化ししっかりと理解し合う)と、精神科実習地(九州)での院長の姿勢(状態が悪くても患者さんを一人の責任を持った人間として話し合い治療契約を結ぶ)やOT指導者の隔離室から就業支援までの関わりに感銘を受け、精神科領域で働くことを選択しました。卒業前、多くの知識を得ようと母校の先生が精神科病院で実施するOTに陪席し、「開放治療」開始直後の病院と出会いました。1995年当時、県内ではOTがない精神科病院が散見され、長期入院患者への管理的な関わりが優位な状況でした。「開放治療」に選ばれたメンバーたちは皆キラキラした表情で自由な散歩やOTを楽しんでおられ、OT中私が提供したワクワクエピソードをきっかけに、患者さんや院長からここで働いてほしいと乞われ、私もここで実習地のようなOTを提供するんだ!との強い使命感をもち、就職を決めました。

 

実際に働き始めて

 OT室開設は同級生と一緒に「OT室準備グループ」を立ち上げて、メンバーである患者さんから危険物管理方法を学びつつ必要な物を手作りしながら行いました。病院初のOTに他職種も協力してくれましたが、常にOTとは何か、何を大切にしていくのか、様々な場面で問われました。新卒同士悩むことが多く、プログラムの種類や運営は地域のOT勉強会で先輩方に相談し、県内外の研修会で知識を得、情報交換を行いました。また、卒後から県、近畿、日本へと段階的に個別ケースやプログラムについて毎年1回学会で発表することを自分に課しました。発表は自身の臨床を振り返って不足や効果的だった点を整理し、臨床と理論を照合することで、他のケースにも理論を生かすことができました。当時作業療法士は1万人に満たない状態でしたから、学会もアットホームで、運が良ければ素晴らしいフィードバックや情報交換から悩みの解決につながることもあり、何より顔なじみが増えて、自分だけが悩んでいるのではないという普遍的体験や新しいアイデアを得ることもでき、他院との比較から俯瞰的視点をもって日常の臨床に戻れました。人脈ができ、保健所での集団活動など院外での仕事を依頼されることもありました。

 

認定作業療法士を取得することで

 私が認定作業療法士を取得したのは、日本作業療法士協会が「認定作業療法士制度」を創設した2004年4月でした。認定作業療法士にはOTの「臨床」「教育」「研究」「管理運営」における一定の水準が求められますが、当時は初期特例で今より取得要件は少なく、実習生受け入れもしていたので、それらの記録を送ることで認定作業療法士を取得、更新することができました。認定作業療法士の資格をもっていることで私が得られた直接的なメリットは、今のところ、臨床実習指導者研修を免除されたことや勉強会開催時に参加者に生涯教育ポイントを渡せたことぐらいです。しかし、その過程で得た知識や経験は前述の通り、多角的に私を働きやすくしましたし、副次的な効果として、共に働く後輩たちの学ぶ姿勢や部門内での一体感の向上、ひいては院内でのOT部門の地位向上にも繋がっていたように思います。また、何よりも私が知識と技術を向上することで目の前にいる患者さんの希望した生活が叶う機会を増やせ、30年近く充実した職業人生を歩むことができました。学びの先にある豊かな体験、皆さんもぜひ味わってみてください。資格は後からついてきます。

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