WEB版すいせん [2021年2月号]
福井県内の専門・認定作業療法士の紹介⑨
氏名:清水重和
所属:若狭町国民健康保険 上中診療所 リハビリ道場わかさ(要支援部門担当)
認定作業療法士を修得するに至った思い
私は、養成校を卒業後、大阪の総合病院に就職し 、7年間認知神経科学に基づいた治療手技を中心に学びました。4年目からは大学院に入学し、臨床と脳科学系の研究を両立させながら国内外の学会に参加していました 。その頃は、作業療法士協会の会員でありながら、認定作業療法士についてほとんど知ろうとすることもないまま、取得することにあまり意味を見出していませんでした。若気の至りと言いますか、作業療法士という職種を越えてもっとビックになりたい、というような野望があったのかもしれません。しかし結婚と妻の妊娠を機に、現職場へ転職し、日々じっくりと臨床に向き合う中で、今一度作業療法士という職種としていかにスキルアップしていくかを考えるようになり、認定作業療法士に興味を持つようになりました。さらに取得への決意を加速させたのは 、田舎の小さな医療機関でも都会の病院に見劣りしない作業療法を、地域の方に提供したいという想い が大きくなってきたことです。
修得までは、色々なことがありました が 、特に苦い思い出は事例登録の時に査読者 に「あなたがやっていることは作業療法ではない」と書かれていた時でした 。機能的回復ばかりに気を取られて、活動や参加など環境因子まで考えがいたっていない、作業療法士としての未熟さに愕然としたのを覚えています。
仕事上での活かし方
認定作業療法士を取得する際に、教育法、管理運営などについて学びます。日頃臨床に追われているとじっくり学ぶ機会のない内容なため、取得後の実習生の指導も変化がありましたし、職場全体がうまくまわるように考えて仕事をするなど以前よりも視野を広く持てるようになったと思います。また、認定作業療法士を取得すると、色々な研修会に呼んでいただく機会が増え、元々ほとんど知り合いのいない福井県でしたが、仕事上でのさまざまな繋がりを構築することができたと考えています。
これから修得を目指す作業療法士にメッセージ
認定作業療法士になっても 、給料も上がらない診療報酬にも関係ないと 、意味を見いだせない方もいるのではないかと思います。私もかつてはそうでした。今自分が修得してみて感じることは、認定作業療法士になることは決してゴールではなく、作業療法士としてクライアント中心の臨床を実践するにあたって必要なこと、経験年数を重ねる中で必要となってくる後輩の育成や職場全体のマネジメントスキルを向上させていくことなど、当たり前のことを確実に身に着けるための道しるべ、一つの通過点であると考えます。
私自身、認定作業療法士を志した動機は大したものではありませんでしたが、今になっては本当に良かったなと思っています。認定作業療法士になるということは、偉くなることでもなく、専門職にはあたりまえの日々行っている自己研鑽に過ぎないと思いま す。