WEB版すいせん [2023年8月号]

福井県内の専門・認定作業療法士の紹介⑭

こぱんだ訪問看護ステーション
認定作業療法士 佐藤 英子

 

認定作業療法士を習得するに至った理由と取得後のこと

 養成校卒業後群馬県の病院で働きはじめ、私がなりたかったのは作業療法士なのかと悩みました。その頃呼吸リハチームに参加する機会を頂いてのめり込み、呼吸療法認定士の受験を考えましたが、当時は作業療法士には受験資格がなく断念しました。その後も迷いは続き、地域の中核病院やその系列の老人保健施設、大学病院で勤務し、急性期、回復期、維持期の作業療法を経験しました。様々なことを学び、やりがいを感じながらもその時々で、作業療法とはなんだろうと悩み続けました。呼吸の専門的な資格を取りたい思いは変わらず他職種の取得も考えましたが、まずは作業療法士としてできることを考えてみようと思い、臨床10年目に認定作業療法士を取得しました。

 その後結婚、出産、子育てを経て、我が子が愛おしく、子育てが想像以上に奥深く大変で両立の難しさを感じている時に認定の更新時期を迎え、出産育児の理由で期間延長を申請し、夫の理解と協力を得てなんとか更新を果たしました。それ故、近年私にとって認定作業療法士は更新の大変さの印象が強かったのですが、今回この原稿依頼を頂き自分の作業療法半生を思い返し、私は、他県から嫁ぎ知り合いもいなかった福井県で、認定を持っているが故に自分の存在を知ってもらい、若輩者の私に身分不相応な機会を与えて頂き、沢山の学びと繋がりを得られたことに気づきました。

 恥ずかしながら、私が作業療法士になってよかったと心から思えるようになったのはここ数年です。臨床18年目に訪問看護ステーションに勤めはじめ、私は地域の人を支えるためにこれまでに学ばせて頂いたこと全てを活かしたい、活かしていけると感じました。

 Aさんは、脳梗塞後回復期リハ病棟を退院し在宅で継続リハを希望され訪問を開始しました。機能回復への期待が大きく、それに寄り添うかたちで生体力学的アプローチメインの介入を行いながら、「人は作業をすることで元気になれる」ことを伝え続けました。AさんとAさんの家族が作業の大切さを実感してくださったのはそれから1年以上後でしたが、趣味の園芸導入後の回復は、生体力学的アプローチメインの時期より良いと本人も家族も実感され、私自身も作業の力を再確認し、作業療法士でよかったと心から感じることができました。

 また主婦のBさんは余命数ヶ月で、癌の痛みと闘っておられました。酸素吸入をしており、呼吸困難感から不安も感じ、残り少ない在宅生活を不安の中で過ごされていました。訪問では、痛みや呼吸困難感について聴取し、医師や看護師と連携し、痛み止めのベースアップやレスキュードーズの適切な使用を促し、環境調整をして適切な休憩を取りながらの家事を練習し、小学生の娘さんに遺す母の料理レシピを作りました。作業療法は、終末期の患者さんに対しても、可能性を提示し、生きる希望を与えられる職種なのだと実感しました。

 出会った患者さんの人生に思いを馳せ、その方のされてきたことを理解、肯定し、満足して最期を迎えてほしい。そう思い、今私は、がんの専門作業療法士の勉強をしています。その中で私は、私がこれまでしてきた「傾聴」はインタビューに似たものであったと気づきました。学生時代から何度も大切だと認識していた「傾聴」を本当の意味でできるようになってきたのも最近なのだと気づけたのは、子育てと、自宅に伺うという立場での介入と、専門作業療法士の勉強のおかげであると思っています。

 

認定作業療法習得を考えている方へ

 鎌倉矩子先生は、「臨床家たちは、疾患・障害に対する知識や評価・介入の実践理論だけにしたがって臨床活動を進めているのではない。その場、その時、その人をめぐる様々な状況を読み取り、決断しながら仕事を進めているのである。それは自分の五感、知識、経験、常識、判断力を総動員した活動である」と述べています。

 目の前の対象者を深く理解し、QOLを目指すアプローチのための学びは、テストのための学びよりもはかどりやすいと感じます。また一人一人の対象者との出会いを大切にし、職場や研修会で症例検討を重ねることの尊さは計り知れません。経過をまとめ他者に伝え、アドバイスをもらうことは何よりの学びだと考えます。その延長が事例登録や学会発表、論文であり、認定作業療法士取得だと思います。また、知識や実践理論について学ぶことも大切ですが、結婚や出産、子育て、自分自身の趣味や人付き合いなどで得られた経験や判断力は何にも替えがたいものであり、実践においては傾聴や物語的リーズニングに非常に役にたつと感じています。

 私自身も、下の子が3歳を過ぎ、少しずつまた勉強の時間がとれるようになってきました。これまで沢山の方から受けてきた恩を、微力ながら対象者や地域、後輩に、お返していけたらと考えています。もしも今、私生活が忙しくて認定作業療法士取得を迷っておられる方がいらっしゃったら、よかったらまずは一緒に、これからの作業療法や地域について考えてみませんか。

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